ゴールできない 7月30日

この日は制作道場の初回だったので、搬入に費やす時間が比較的豊かにありました。

手伝ってくださる人員も豊富で、それがかえって針のむしろでした。企画案を説明する段階で、本当に何も準備してないことが全員にばれました。

一ヶ月前に出たマラソン大会の関門アウトのシーンを再現したいです、パフォーマンスじゃなくてインスタレーションです、とかもごもご言ってたら、無表情の山下さんをはじめとする皆に口々に

「それでいいの? メディアとか取材来るよ。くるみちゃんが走ってないと伝わらないんじゃないの?」

と諭されて、一瞬で

「走ります!」

でした。

そこから、ルームランナーを探して、町の役場や、温泉街の宿泊施設や、教育委員会に電話したりして(山下さんが)、ついに近所の老人介護施設からめでたく発見されました。利用者の方の不要になったものだそうで、ありがたく受け取りに行きました。わたしは普段グループホームで福祉の仕事をしているのですが、日常から遠く離れて今また、いつもの職場みたいな場所でルームランナーを譲渡されている違和感が、背景は同じで登場人物やアイテムが少しずつカオスなレム睡眠のようでした。

 

いざ展示空間にルームランナーを置いてみると、一生懸命走っているのに前に進めない不毛なかなしさがぴったり決まっていました。

 

旧作の、たくさんのランナーのゴールシーンの絵を畳に立たせて、行き止まりのバッテンの旗とわたしが向かい合うように関門を表現。いいじゃ〜ん、で解散して、翌朝美術館に行くと、居合わせたスタッフさんのお子さんの小学5年生のかんくんが、くるみちゃんなんであっちにいないの〜?と、ルームランナーを昨日決めた位置とは反対側に配置すべきだと主張。

ばかのガキのくせに!!と思いましたが、かんくんの言う通りにしてみたら、ものすごく空間に広がりが出てしかもストーリーもわかりやすくなって、何故おとなが5人集まって気づかない?でした。

あとわたしはクラスいちのモテ男と名高いかんくんに「くるみちゃん」とか下の名前で呼ばれてバレンタインでもないのにチョコをあげそうになった。若返りました。

ありがとう!今夏休み?明日も現場監督しない?

 

初日を終えてみての反省ですが、善三作品や畳空間にリラクシング効果を求めてきたお客さんが、突如美術館に出現したルームランナーとわたしの異常な発汗量に、焦点を合わせまいと遠巻きにしている姿が、わびしいというか申し訳なかったです。

見かねた美術館スタッフが、こわくないですよ〜って声をかけたりしていて…。扱われ方が危険物です。

結局、口で説明するのが一番伝わるよね! という壁を乗りこえられなかったところに、美術の壁というか、自分の能力の限界を感じました。

 

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画面左端、関門の非情を示した時計

横倒しにした長机にビニールテープで数字を書いてます。

クオリティが異様に高いのは友人の武内さんがつくったため