かかし 8月4日
今日は庭のかかしを写生しました。
また写生?つまんねー と思いましたか?
ありがとうございます!
最後まで読んでくださいね!
一昨日のことです。
善三美術館を訪れたうら若いカップルが、やけに熱心に制作道場コーナーを見てくれているなあと思ったら、なんとふたり揃って作品プランを書いていってくださったのです!!
「昨日は黒川温泉に行きました~」とにこやかにお話されていました。愛知から観光で来られたそうです。
企画書大募集。 立ち止まる人さえまばらな寂しい一区画
4日目にして、初めてお客さんからアイディアが舞いこみました!
うれしすぎて、企画案を見ないうちから「絶対実現します!」と大風呂敷をひろげてしまって、出ました~!また!サービス嘘! でしたが、わたしより先に企画書を見た山下さんの「えー!!これおもしろいよー!」の叫びに興奮しました。
それは、美術館の庭でかかしになりすましたわたしと、室内に置いたわたしそっくりのマネキンとで、お客さんを混乱させるという企画でした。
山下さんが、「うそ、たまたま来た一般の人なの?美術畑の人じゃなく?くるみちゃんの本質を突いているよ」と唸っていました。
…わたしの本質ってなんですか? もはや人だと認定されてないってことですか?
とにかくわたしは企画書を書いてくださったことが信じられませんでした。彼らが帰ったあとすぐ隣の神社から鐘の音が聞こえてきて、あの幸せそうなカップルがお参りしているんだと思うと胸があつくなりました。永遠にお幸せに!あなたたちがかみさまに願っていた時、わたしも美術館から「彼らの望みを叶えてください」と念じていました!
そしてそして、いただいた企画も、早速叶えちゃいますよ!!!
というわけで、今日は写生ではありません。かかしになりました。
かかしは簡単ですが、問題はマネキンです。
しかしわたしは以前、太郎賞展で見た、黒い布のかたまりが人っぽくみえる作品を思い出したんです……
望月俊孝さん 『うつつみ』
面識もないのにすみません!アイディアお借りします!
能面は祖父の手作りです。何かに使えないかと持ってきたのが役立ちました。黒い布の中身は座布団とリュックとタオルとカップ麺です。
ふりしきる雨も、かかしらしさに一役買っているように思われます。恵みの雨です。
鍬を手に、なりきりました。
片足立ちを徹底。
マラソンのトレーニングになるといいです。
ただ立っているだけなのに、お客さんの反応が思うつぼで、
「本物たい!」
「偽物たい!」
「人間たい!」
みなさん言いたい放題でした。聞こえてますよ。熊本弁って本当にチャーミングですね。
のぞきこんで
のけぞって
あっはっは
帰るとみせかけて
もうひとやま
傘を差し出してくれる方
「雷雨の中ごくろうさま」といたわられ、わたしの頬をつたっているのは雨ではなくうれし涙です。
記念撮影をされていく方もたくさんいました。
得意のサービス精神でつい小さくピースサイン。かかしらしくして!って怒られたりして。でも、反射的にポーズ出しちゃうんです。フラッシュと勘違いして、雷の閃光にまでピースをしてしまったり……。
一番さいごのお客さんが帰られる際、ちょっと質問、と投げかけられた問いが、
「時給いくらですか?」
「トシいくつですか?」。
お答えしましたが薄いリアクションでした。お客さんによろこんでいただけることがわたしの幸せです!一体、時給いくらで何歳だったら納得されたんでしょう?28でかかしはきついですか?
時給はありませんが、天からの贈り物のようなかかしとの出会いでした。
片足立ちによる軸のブレや、バランスをとるための不安定な揺れが、人間か人形か判別がつかない絶妙なラインをキープしていて、自分の鍛えられていない体幹が大活躍でした。
さらに、右足と左足を定期的に入れ替えなければならないのも、使える!んです。限界まで我慢して震えているのに、お客さんが目をそらしてくれなかったりすると、素早く「ナイショだよ」とシーって口元に人差し指をあてるポーズを決めて足を取り替えたりなんてして、わたし!かわいい! です。お茶目ですね。
かかしには、パフォーマンスに大切な『動作の必然性』がすべて揃っていて、「やっと会えたね」って感じがしました。
制作道場、一週間が終わりました。
ここにきて他力本願が実を結びました。
愛知のお客さま、本当にありがとうございました!