小国中ワークショップ5/父の背中 8月20日
今日は盛りだくさんすぎて何を書いていいかわからない。
お葉書や手紙や荷物が一挙に届いたり、いらっしゃるお客さんもとても濃く、もう少し分散してくれてもいいのにと思ってしまった。お越しくださった方、気にかけてくださっている方、ただもう感謝でいっぱいです。つまんないこと言ってすみません。
この日の中学生ワークショップは15名という大勢が集って、わたしはガラスが割れそうな大声を張りあげ続けました。
後頭部の顔描きは、みんなけっこう興味深げな面持ちで今にも一歩踏み出しそうにしているくせに誰も「描きます」とは言い出さず、そういう子には触れないでいちばん遠くにいた子を指しました。
まるで人ごとみたいな顔をしていたので。
わたしは小学校までは比較的優秀で、いつ当てられてもいいよう準備万端でキラキラしているタイプでした。当時はわざわざぼんくらを指す先生の心情が解せなかったのですが、自分が指名権を得た今、やっぱりかつての自分のような子はスルーして、もっと先が読めない子に委ねたいと迷わず思いました。
描き終えて自然にわき起こる拍手。
ありがとう!いい顔です!ぼんくらアンパンマン!
数字書き
ひらかな書き
数字と文字でウォーミングアップをしたところで、
全員で「くだもの」の絵に挑戦するよー! みんな、一列に並んだらまるく輪になって!!
そしたら、円になったら何描いてるか見えてまうやんと突っ込まれ、ほんとだ!! 死ぬほど笑いました。気ーづーかーなーか っ たーー!
ひえええどうしよう!
でも、輪になってるところの画が撮りたいんだようとわたしがごねたら、みんなが「順番がくるまで目をつぶる!」と協力してくれました。
あなたたちは日本の宝です。
スタートのさくらんぼ。
中盤のリレー。
ぶどうが伝わっている。
…わかった!
描かれてる最中は真剣そのもの
どうしようわかんない…
何度もなぞります
わからない線をそのまま描いて!
………えー…
なんだよこれで終わりかよ!
くだものじゃねえ
くだものじゃない…
ブーメランになって戻ってきましたあ
みなさんのご協力で輪になって描く夢が叶いました。わがまま通してごめんね!輪になったせいでてんてこまいだし、今見たら輪っぽい写真もあんまりなかったよ!
かろうじて輪になっているような、遠巻きにみているだけのような一枚。輪になる必要なかったね。もうしません。
リレー選抜。十二指腸のような物体も紛れています。きっと腸の中にさくらんぼがいるんです。「見えぬけれどもあるんだよ」。
後ろの顔が、たいがい間抜けで気に入っています。わたしによく似ている。
午後。
『父の背中』は今日もたくさんの方に参加していただきました。
明後日でワークショップが終わるので、そしたら3回分まとめてご紹介します。
ワークショップも手伝ってくれた、美術の先生のご友人が一曲披露してくださいました。
『父の背中』のメッセージは「一日一味噌」。味噌屋のお嬢さんです。ありがとう、よい旅を!
そして「校内のポスターを見て」わたしの出身大学の在校生がはるばる小国まで来てくれました、広島から、3日かけて、自転車で。そんな楽しそうなことされて悔しい。若者の芽を摘もうと思って山下さんといっしょにいっぱい適当な人生相談して惑わしました。迷え迷え。『父の背中』は「虫とり少年」。 応援してます、よい旅を!
---本日の学芸員赤ペン--------
中学生のワークショップも5回目となりました。
毎回新しいことを盛り込みたいと考えたくるみちゃんの、最後は「円」になるというプランは、賢い中学生たちにあっさり一蹴されたものの、これまた賢く優しい中学生たちの協力で無事成功。みんなとてもいい顔で取り組んでいました。
夏休みの小国中1年生の鑑賞体験教室は、始めてからもう10年を超えますが、ここ3年は「アートの風」の招待作家たちにワークショップを担当してもらっています。コミュニケーション力がある作家によるシリーズ「アートの風」なので、当然、ワークショップも楽しいものになります。何しろ、作家と直接触れ合うというのは、先生や学芸員の話を聞くのとはやっぱり違います。先生には先生の、学芸員には学芸員の得意な分野や話し方があって、作家にはできない部分もあるのですが、やはり後頭部に顔を描いてもらうというのは誰にでもできることではなく、作家にしかできない伝え方なのです。
何が伝わっているのかは、中学生たちが大人になった頃にわかるのかもしれません。でも、伝わっていて欲しいと思うこと、伝えることができるのではないかと思うことは、世界は多様で、人も多様で、今いる自分の小さな世界の奥には、思いもつかない広い世界が広がっていて、想像力でジャンプすれば、いつでもそこにアクセスすることができるということ。そして、今いる自分の小さな世界も、他の誰かから見れば思いもつかない広い世界であること。それぞれが小さくて広大な世界を持ち寄ってこの世界が成り立っていること。
そういうことではないかと私は思っています。
中学生回も残すところあと1回。
次はどんなことが起こるのかな~。
坂本善三美術館 学芸員 山下弘子