虎の威を借るジャージーバター 8月17日
小国名産のジャージー牛乳で、バターづくりをしました。
ペットボトルに牛乳と塩を入れて振ると、乳脂肪が分離してバターができます。
ちびくろサンボでバターになっちゃう虎が原案です。虎になったわたしがペットボトルを持ってぐるぐる走ります。
子分の虎を3匹用意。
段ボールは引っ越しのサカイ
黄色いベストは役場のユニフォーム
パンダが虎に。
スーパーラット(Chim↑Pom)からの、スーパートッラ
小国の空にピカ!
おなじみのホームセンターサンクスで。
『特長:果樹園・田畑でイタズラ者の鳥やサル、イノシシ、シカ等の野生動物に効果抜群です。特に猪・鹿はネコ科の動物を嫌います。吊るしたトラがリアルに揺れ動く姿に驚き近づきません。』
ほんとか? 低価格設定も哀れな「鳥獣撃退タイガー」は、獣を撃退するどころかカラスに返り討ちされてあっけなくしぼみそうで、守ってあげたくなりました。
保冷剤とペットボトルを虎箱にセット
威厳のない虎の威を借ります
周囲に睨みをきかせる鳥獣撃退タイガー。中身がないからってそんなに虚勢をはらないで!すがりついてくる虎のビニールのぬくもりに母性が湧きました。
いってらっしゃい!立派なバターになっておいで! 山下さんのもとでわたしはこどもです。
開封します。
出てきたのは泡立った液体でした。バターの面影なく再チャレンジ。
首があつくるしいです
わたしがカメラに笑顔を向けていた背後で下敷きになっていたピカチュウ
ピカチュウついに落下
黄と黒のストライプで危機を訴える
お迎えがきたよ
引き取りました
「栄光のかけ橋」、「ランナー」、お客さんが応援ソングを流してくださいました。
「サライ」が終わったらゴールだよ!
10、9、
8、7、
6、5!
4、
3、
2、
1、
ありがとうございましたー
皆さんに開封していただきました。
…牛乳でーす/こちらもでーす
その手で振っていただきます!
いい顔してる場合じゃないですよ。もっと気合い入れて!
これが見本です。
これも見本です。
なかなかです。
このつぶつぶがバター。もっと大きな固まりと、透明な水分とに分かれるはずなのですが…ここから進展せず。今の季節はバターが出来づらいとの情報が入りました。牛が青い草を食べるため、夏はあっさりした牛乳になるそう。冬は枯れ草を食べるせいで水分量が少なく濃厚な牛乳になるそうです。
お客さんに、パンに手づくりバターをつけて提供する予定でしたが、諦めてパンと牛乳とを召し上がっていただきました。
飲食の合間もシャカシャカ振り続けてBGMはスマップの「シェイク」です。
「ジャージー牛乳、濃い!」「甘い!」。 そうでしょう? 乳脂肪分が高く、コクがあってまろやかなんです。サイトからコピペした情報です。わたしは北海道生まれのくせに乳製品が苦手で…。給食で必ず出てくる牛乳がほんとにいやでした。今は飲めるけど、低脂肪乳のほうが好きなのでジャージー牛乳を語る資格はありません。
ありがとうございます!結局2時間ほどもおつきあいくださったおふたりと山下さんと。さんざん腕を酷使させてしまいました。明日は一緒に筋肉痛ですね!制作道場における「幸せそうなカップルは協力的」説がまた更新されました。こんなに振ってくださったのに、バター出来なくてごめんなさい。わたしたち、バターに振られてしまいました。思いは成就せず。
あと、次にバターのリベンジする時は「虎イアスロン」がいいんじゃない? と助言をくださって、盲点でした。海で冷却もできるし、いいですね!自転車買ってください。
閉館の5時が来ました。これが限界。
生クリーム買ってきちゃう? ミキサー持ってくる? ズルの手口をひそひそ話し合いましたが、試しに漉しとってみることに。
すばらしい泡立ち
泡が消えるとみすぼらしい…。
しかしなんとなく茶こしの目が詰まってはいます。これはバターなんじゃないの?ということで、2本目のペットボトルも投入。
しゃ、写真!! 画面で小さく見ると、バターっぽい!! 現物は泡なのですが、モニター越しだとまるでバターだったので、泡をすくって、バターっぽくパンにつけて撮影しました。
バターみたい!
バターみたい!
バターみたい!
山下さんは、もうブツ(写真)はおさえたからいいじゃんと言っていましたが、3本目4本目も追加してみたら脂肪のかたまりがしっかり残って、それは、バターみたいな、本物のバターでした!感動しました。出来てたんだー! 感動とともに、ずっと振り続けてくださったカップルにこれを食べてもらえなかったのが本当に悔やまれました。
必死でかき集めた脂肪
バター!!!!!!!
くるみパンとバター
やった!おしゃれだね!クウネルっぽいよ! 山下さんの瞳に踊る邪気。
わたしは、「白かったジャージー牛乳が、黄金色の虎バターになりました」と言いたかったのですが、なんだか白くて残念でした。
脂肪を取り除くって、すごく大変なことでした。ダイエットの難しさを象徴しているようなこの企画でした。わたしは乳脂肪より自分の体脂肪をなんとかしたいです。
おいしいバターでした!
虎のみなさんもおつかれさまでした。
黒いビニールテープを剥ぎ取ったピカチュウ。なんかものたりない…
---本日の学芸員赤ペン---------
トラの威を借るジャージーバター、最高でした。
「何時からやるんですか?」と待ってくださるノリのよいギャラリーにも恵まれ、まさに抱腹絶倒のパフォーマンスでした。
作品が自らの内的必然性のほかに目的を持たないというのが「芸術」のあり方ですが、本作品は、ジャージー牛乳でバターを作るという目的が一応在るものの、そもそもなぜバターを作らなくてはならないかという点で「作品であるから」という以上の理由をもたず、ただ純粋に作品の内的必然性完遂のためのバター作りとして、まさに真の「芸術」なのであります。
・・・とか言いたくなるくらい、トラを背負ってトラの箱をガッコンガッコン引きずりながら善三美術館のフォトジェニックな庭を走り回る様は、純粋芸術的に馬鹿馬鹿しかったのです。
実際その場でバターにならなかった点も、より一層行為の無意味さを強調し、非常に純粋芸術的でした。
バター作りが目的なら、ハンドミキサーでガガガとやればいいところを、わざわざちびくろサンボのトラのバターになぞらえて走って作ろうとするなんて!企画書を見た時点でも盛り上がりを確信していましたが、これはもう、思った以上におかしくておかしくて、ビデオカメラを持つ手は震えるし、笑い声は抑えきれないし、笑いすぎて涙は出るし、でした。
いやあ、いいもん見たなー。
この馬鹿馬鹿しい行為を抱腹絶倒のおもしろさにするのは、やはりパフォーマーの人間力によるところが大きく、若木くるみは、パフォーマンス時に「素」の若木くるみを引きずらない切り替えスイッチを持っていると思います。限りなく「素」に近いではあるのですが、照れやてらいやためらいをサラッと脱ぎ捨てて作品に入っている。女優です。
くるみちゃんは自分の人間力の種類を客観的に見極め、それにあった表現をしていると思うし、「素」の自分を1枚めくったところにいる自分に何かの可能性を託しているのだろうと思います。そうなると、結局のところその「人間力」を深く掘り下げていくことが、これからの作品の深みや幅へと繋がっていくことになるんでしょうか。
何だか年配者の説教みたいですね。でも、10年後20年後のくるみちゃんがどうなっているのか、見てみたいと思うわけですよ。
ところで、いつも町内で友達に「今すごくおもしろい展覧会やってるから見に来てね!」と宣伝しているのですが、どんな内容か聞かれるので「人魚になって魚体盛りしたの」とか「他力本願寺で仏になったの」とか話すと、きまって返ってくる言葉が。
「それってお笑いとは違うの?」
・・・・・・どなたか一言でうまく説明してくださいませんか。
坂本善三美術館 学芸員 山下弘子