朝採れ野菜のお弁当 8月2日
小国に来てから、毎日スタッフの方にいただいた自家栽培の野菜を食べています。採れたての野菜は、えも言われぬおいしさです。見てくれもまちまちでおかしいです。
最近の善三美術館のお昼のブームは、ピーマンの種ごと丸かじりです。何分チンするのが最適なのか、あつい討論が展開されます。
わたしはいつもいただくばかりで恐縮なので、もっと大きな顔で野菜をもらえるように、展示のモチーフに使うことにしました。
朝、スタッフの江藤さんの畑に収穫に行きました。
なす、ミニトマト、きゅうり、ゴーヤ、ブルーベリー、しそ、かぼちゃ。
虫がこわいとか、クモの巣がやだとか、腰がひけましたが、江藤さんのお子さんたちに気づかれないように平気な顔で摘みました。
美術館の畳を一枚ぱかっとあけて、お弁当のように野菜を並べます。
オニヤンマが入ってきました。
ここは虫取り網が常備されている美術館です。
写生が終わった野菜から食べていいルールです。
ミニトマトにばかり手がのびます
どんどん描かないといけないのですが、つい描きこんでしまって…
一枚に時間をかけすぎてしまって、山下さんが渋い顔に。
「おしゃれナチュラル素敵エコ作家みた〜い」と何度もおっしゃっていました。そのフレーズ気に入ったんですか? 悪意を感じました。
トマダルマ
写生をしているところに、名誉館長がいらっしゃいました。
初対面です。
「わしは他人さまの絵にどうこう言うことはせん」
と前置きしながら、その設定を速攻でひるがえし、ちまちましたわたしの描写に、
「わしは荒く描いた絵がすきじゃけん」
「絵はうまくてもなんの意味もない」
「うまくなればなるほど悪くなる」
と、耳の痛いお言葉のつるべうちでした。
「たましいの入っていない絵に価値などない」。
わ、わたしのたましいはどこにあるんでしょう?
おずおずお導きを乞うと、それがわからないやつが絵を描いてはいけん、頭の良いやつしか画家にはなれん、絵はサイエンスだ、とまたしても一刀両断されました。
生まれ直したい!次は野菜に、と思いました。そして芽がでないまま土の中で永遠に眠っていたい……。
うなだれるわたし。山下さんは大笑い
ここから話は教育論に向かい、学校の存在意義をまっこう否定されていました。
型に嵌めよるところが学校なんだから、そんな場所正しいわけがない、と。
明日は中学生のワークショップです。
今日食べたのはミニトマト36個となす1個とピーマン3個とゴーヤを5齧りとブルーベリー7個でした。
漫然と描き、漫然と食べ、漫然と片付けて終わってしまいましたが、帰ってから見た美術館のツイッターには「頂戴してきた命はすべていただきます/はたしてすべての命をいただけるのか!?」と書かれていて、そういえば山下さんが、「今日はくるみちゃんがなかなか食べきれなくて苦しむ企画にしよう〜」とウキウキしていたことを思い出しました。ぜんぶ描き(食べ)終わるまで居残りだからね!と、苦手な給食の日の放課後みたいにされなくてよかったです。
あと、さいしょの企画案では、『野菜を食べて空いたスペースに、出来上がった写生を並べて絵でお弁当をつくる』だったこともすっかり忘れていました。
当初のもくろみ通り、両手にかかえきれないほどの野菜をもらって帰りました。
いい企画でした…。
一生目覚めないんじゃないかと思うほど深く長く眠りました。野菜になる夢をみることもなく。もっと館長と話したいです。