他力本願寺 8月11日
あご肉のもたつきがふてぶてしさを倍増させる阿弥他仏。
タイトル先行で盛り上がった今日の『他力本願寺』は、明治時代の家屋を移築した善三美術館の和空間が、寺のイメージにぴったりということですんなりまとまるはずでしたが、わたしがおなじみの背面をつかって仏になること以外肝心の内容が決まらず、逃げるようにディティールだけがどんどん充実していきました。
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絵筆の後光/ 耳たぶは白玉粉/千手観音的いくつもの手
「企画書を出してください!叶えます(努力します)」という、この『制作道場』企画が他力本願で成り立っているということを指しての『他力本願寺』です。今日を通して、お客さんからアイディアをせしめるつもりでした。
しかし、「企画書書いて!って難しいよ〜、みんな参加しづらいよ」とダメ出しされ、お客さんの普通のお願いを無理矢理企画書に仕立てあげることにしました。
でも、なんだろう、あんまりぴんとこない…。
前日の晩、メールで山下さんにご相談すると「ナムアミダブツを唱えて考えたら思いつくはず!」とのんきなお返事。クソっと思って唱えなかったからでしょうか? 何も浮かびませんでした。
仕方がないので、当日お客さんに相談しながら決めていくことにしました。『他力本願寺』まるごとが他力本願です。
朝いちばんでいらしたのはご家族連れ。やばあい、ほんとに決まってなーい。今日から入りました、バイトの仏です! って感じでしたが、不慣れな様子を必死に隠して即興で手順を説明しました。
小学生と思しき男の子が「ずっと元気でいられますように」と子どもらしからぬお願いカードを渡してくださいます。わたしは後ろ向きに座っているので相手の様子はわかりません。それでも、何かこちらのリアクションを期待して背後にずっと座っている気配はひしひし伝わって……。
ええと、何をどうすりゃいいんだっけ?このお願いを即座に企画書にするんだっけ? むりでした!!! なんとか書きましたが、思い出すだけで窒息死したくなるあまりにも低レベルな企画書ができて、そもそもの発案から企画倒れだったと判明。
男の子は、あたふたする仏をどんな目で見ているのでしょう? 後ろ向きのコミュニケーションにしてほんとによかったと思いました。
しかしここから、仏の皮をかぶることを諦めて居直ったわたしの、一世一代の他力本願ショーがはじまりました。
「…ご覧のとおり、ものすごく行き詰まっているんです。これこれこういう理由でこうなったのですがどうすればおもしろいですか?他力本願という言葉から何を思いますか?」
仏の真後ろで当の仏からべらべら悩みを打ち明けられた男の子。困惑?驚愕?恐怖? 長い沈黙を破ったのは彼のお父上でした。
「他力本願だったら、『他の神社にお参りしてください』って言えばいいんじゃ?」
神降臨! いーたーだーきーまーしーたー!!!
仏が神(お父さま)に深々とひれ伏しました。
左端に見切れているのが神のありがたき右半身です
善三美術館から眺む隣の鉾納社神社
参拝心得は以下の通りです。
おふだに願いを書く
御願堂に納める
鐘(風鈴)を鳴らすと仏の手がおふだにのびる
おふだの裏にメッセージをしたため
おふだを切って、左側(願い事)は掲示板に
右側(裏面に仏のメッセージ)はプレゼント。
メッセージは『隣の神社に』の一点張りなので、単独でいらっしゃるお方には大ウケですが、連続で応えなければいけないときのいたたまれなさは苦行でした。「母の足がよくなりますように」という重いお願いも…。ふざけている場合ではありませんでした。
3人家族の訪れには冷や汗をかきつつ、
対こども→『隣の神社にお参りしてください』
対お母上→『おいたわしいです。わたしからも神社にお願いしておきます』
対お父上→『心中お察しします。いっしょに神社行きませんか?』
苦しく言い回しを変えたところ、奥さまに「どんどん積極的になるんですね!うちの旦那をナンパしないでください」と叱られました。
神よ、不埒なわたしをお許しください。
我らを悪より救いたまえ。アーメン。
この日は耳たぶにいちばん手がかかりました。
耳たぶくらいのかたさになるまで練った白玉粉。白玉粉くらいのかたさの耳たぶ。
白だと浮きすぎるので醤油を混ぜて色を落としました。
耳たぶ=白玉粉言い出しっぺの山下さん
両耳からぷんと漂う醤油臭
できたては肌にふれるとひやっとして冷感も耳たぶらしかった白玉粉ですが、時間の経過とともにひからびて無惨な乾燥耳たぶに。
居合わせた作家の淺井さんにお願いして、あたらしい耳たぶをこしらえていただきました。
ガムテープ製です。
長すぎませんか
「白玉粉、よかったけどね」と口々に言いながら装着。くるみちゃんの肌とガムテープすごいぴったりー!と山下さんの賞賛を浴びました。『小麦色に焼けた肌』とは、『ガムテープ色に焼けた肌』のことだったのですね。ガムテープみたいな肌って粘着してきそうでうかつに近寄れません。
あと、何かさわった時「あちっ!」っと言って耳たぶさわる女は信用しない、とスタッフの江藤さんが語気を荒げていたのですが、姉がよくします。
夕刻、山下さんが「功徳をつませていただきます」とお弁当の巻き寿司を口に押しこんでくださいました。
かたわらにあるお供え物。差し入れや、各家庭からかき集めた食糧もちょこちょこつまみ食い。功徳をつまませていただきました。
集まったおふだの数々。「お父さんが木こりになれますように」。応援してます。
山下さんのお願いふだです。
くるみちゃんがビックになりますように。そしてビッグになるきっかけとなった善三美術館が大注目を集めますように。
山下さんありがとうございます。トイレに貼りますね。