小国中ワークショップ4/父の背中 8月18日
ワークショップ4回目。
数字リレー
ひらかなリレー
絵リレー
前回同様、数字、文字、と難易度をあげていき、全員リレーでは絵を伝えました。テーマは生徒さんに決めてもらって「いきもの」に。
出題者が、何のいきものにしようか迷って迷ってやっと長い耳を描き始め、そろそろ2番手にかたちが伝わろうかというところで、うろついていたピンクのガキが「うさぎ!!」とでかい声を張りあげて、息をつめて背中に神経を集中させていた全員の腰がくだけた。「言っちゃだめー!」でした。
わたしは、本人に「ガキー!」と言いながらそのほっぺをコラーとかわいくむにむにしたら、わんわん泣きやがって、クソガキと言いたいところをこらえてただのガキと呼んだのに、配慮が無意味になりました。
生徒さんにはそれぞれうさぎの顔だけ描いてもらって、それから改めて顔の下にポーズを加えていくことに。一生懸命その説明をしている間もガキはぎゃーぎゃー泣き続け、わたしは大きくうなづきながら「泣け、泣け、もっと泣くがいい」と言いました。そしたら本当にボリュームを最大値にされて、自業自得。
ガキの頭部
ガキは山下さんの愛娘たまちゃんです。
実はワークショップ直前にわたしは大切に貯蓄していた高級洋菓子店のチョコレートケーキ(目の前にあると食べちゃうから山下銀行に預けていた)をたまちゃんに食べられてしまって、ただでさえ憤懣やるかたない思いでいたのですが、そもそもそのケーキは山下さんからいただいたものなので、結局あるべきところにおさまっただけでした。それも寂しかったんですようー
よしよし、くるみちゃんこわかったねえ
すっかり糸が切れた中学生ですが、出来上がったこのいきものは天才的な造形で、Tシャツにしたらサブカル男子が買いそうでした。写真を撮り忘れた。後日アップします。
(今日が後日です)
うさぎに体までつけたことで、かえって幅がでて楽しめました。ありがちなバンザイポーズで始まって、だらんと手を下げ落ち込んで、襟元くらいに縮小化されただるまの体で終わりました。
たまちゃん泣かせてごめんね。しかし中学生の笑いを優先させたことに悔いは微塵もありません。
こいつの腹にはチョコレートケーキが
関係ないけど、おもしろかったたまちゃんのお兄さんの絵日記です。
8月10日 土曜日 はれ
おかあさんとびじゅつかんに行きました。
くるみちゃんを見に行ったらイカにくるみちゃんがなっていました。ぼくは「くるみちゃんはすごいなー」と思いました。くるみちゃんはげんだいびじゅつさっかです。
閉館後、山下さんから手渡された「たまが描いた『くるみちゃんとおかあさん』」
曰く「わたしがくるみちゃんにこき使われているところ」だそうです。わたしは「ありがとうございます。帰ってすぐ捨てますね」と言って受け取ったのにまだ捨ててないんです。貴重なデータフォルダ残量を減らして画像まで保存して、自分はほんとにやさしいと思いました。
午後の部は背中つながりで、あたらしい試み「父の背中」をしたのですが、思いがけず密度のある企画になったので、胸をうつエピソードも含めまた後日紹介します。
父の背中
父の背中に寄せ書きを
背中で語った父の無言のメッセージ
正面で語るは父のへろへろ
---本日の学芸員赤ペン---------
今日の中学生ワークショップ、まさかのネタばらしのガキの乱入があったものの、個性的な作品も生まれ、みんな楽しんでくれていたみたいですね。
中学生ワークショップ回の午後の部が毎度の課題でしたが、今日登場した「父の背中」は、思った以上に感動的な物語をうむ展開になってきました。
残り2回の中学生回でも、午後にお父さんに登場していただく予定です。
あなたのお父さんが、背中で語っていた無言のメッセージは何ですか。
詳細はまたくるみちゃんが書くと思いますが、今日最初のお客様となったご一家(3姉妹と両親。3姉妹はすっかり子どもたちも巣立った位の世代の方)の長女・次女・三女の皆さんが書いてくださった言葉に私はすっかり感動し、危うく涙するところでした。決して特別に感動的な言葉を書かれたわけではなく、3人ともごく短い言葉を書かれたのですが、お父さんの人間像がありありと立ち上ってくると同時に、そうやって子どもたちに確かなメッセージを伝えながら家族で生きてこられたこと、子どもたちもそれを胸に今も幸せにそれぞれの道を歩んでいることがうかがい知ることができました。
子育て真っ最中のわが身を振り返ると、そんな芯の通った態度を子どもに示しているとは到底思えず、これからそうなっていく自信もなし。きっと今日のご家族も、毎日の暮らしの積み重ねの中にそれが育まれたのだろうなと思いますし、ご両親も、今になって自分達の子育てや人生を振り返ることができるようになられたのではないかと思いますが、まだまだ振り返れない渦の中の我が家、どんな子どもたちに育つのだろう。
しかし子どもを育てるのは両親だけではありません。作品のためにアーティストにいじられ泣かされたり、赤ペン先生もびっくりのイカ人間日記を書いたりしながら育っていくわけです。
まあ、将来の責任の一端をくるみちゃんにも担ってもらうとするか!
みんな、みんなの子どもです。よろしく~!
坂本善三美術館 学芸員 山下弘子